政策提言を目指す業界団体が乱立しており、統一的な対応が求められています。一方で、ルール作りに時間がかかりすぎると、世界における日本の仮想空間での存在感が薄れる懸念があります。
乱立する業界団体は、波乱の末に統合される可能性があります。
記事では、主要なメターバス関連の業界団体、海外の事例、メタバースにおける現行法の問題点を解説しています。
業界団体が乱立する背景:大企業の参入
メタバースへの投資が世界的に拡大しており、日本国内でも成長ビジネスと位置付ける企業が続々と業界団体を設置しています。
業界団体を作り、仮想空間である「メタバース」の利用ルールを整備する動きが始まっています。
メタバースとは
インターネット上に作られた仮想空間で、ユーザーが自分の分身である「アバター」を動かして、他のユーザーと交流したり、商品の売買などを行ったりすることができます。
メタバースは、英語で「超越的な」という意味の「メタ」と、「宇宙」「世界」を意味する「ユニバース」を組み合わせて名付けれられました。
ブルームバーグ・インテリジェンス社は、メタバース市場の規模が2024年には約7,800億円(95兆円)に膨れ上がると予測しています。
メタバース関連の主要な業界団体
バーチャルシティコンソーシアム
KDDIや東急などで作る業界団体。業界団体による初の自主ルールを提示し、メタバースにおける利用者の権利や商取引に関するガイドラインを発表しました。
日本デジタル空間経済連盟
2022年4月、SBIHD、電通グループ、ソフトバンク、野村HDなどが発足しました。代表理事には、SBIHDの北尾吉考代表取締役社長が就任します。SBIHDは「デジタル空間はビジネスの可能性が大きく、主導的な立場でルール作りに関わりたい」としています。SBIHDは、今後、知的財産の管理などについて議論し、9月末までに提言をまとめる方針です。
メタバース推進協議会
ANAホールディングス(HD)、三菱商事などが2022年3月に設立しました。代表理事には解剖学者の養老孟司氏が就任し、役員として建築家の隈研吾氏、元観光庁長官の溝畑宏氏らが参画しています。メタバースのビジネス活用などを推進する予定です。
XRコンソーシアム
VRやXRに関わる企業を束ねる業界団体で、3月にメタバースワーキンググループを発足させました。同グループでは、メタバースに関わる企業が検討すべき要素や、メタバースを推進するための課題などを洗い出し、議論していく予定です。同グループは、提言書やホワイトペーパーを通じて、政府や業界各社に課題を提起することを目指しています。
ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI)
電通グループや三井住友海上などが加盟、メタバースを意識し、活動範囲を広げています。
ブロックチェーンコンテンツ協会
2021年8月にNFTなどに対する政策提言力を高めるために日本ブロックチェーン協会に加盟
法律とメタバース
メタバースに対する企業の関心は高まっていますが、現行法は基本的に現実のモノやサービスを対象としており、仮想空間への対応は十分とはいえません。
経済産業省は昨年7月に発表した報告書で、メタバースに関する12項目の問題点を指摘しています。
- 自分自身の分身である「アバター」が身につける服や靴などの「アイテム」の所有権は、法律で保護するのが難しい
- 著名人を模したアバターの作成が著作権の侵害にあたるかどうか、アバターに対する誹謗・中傷が名誉侵害に当たるかどうかも不明
海外のメタバース関連の業界団体
海外では、仮想通貨やブロックチェーン(分散型台帳)などテーマごとに複数のロビー団体があり、与野党の議員や政府機関への働きかけへの役割を担っています。最終的にファンドや大企業が参加する団体が存在感を発揮するケースが多いです。